本研究の目的は、大質量原始星候補天体IRAS22134+5834およびH_2O092.67+03.07に附随する分子流の速度構造を調べることにより、分子流の回転を検出・定量し、星形成研究の大問題の一つである角運動量問題の解決の糸口を得ることである。平成13年度は、まず、IRAS22134+5834に対して観測を行った。野辺山45m鏡を用いて、一酸化炭素分子および一硫化炭素分子輝線による観測を行い、分子流の速度場を詳細に調べた。その結果、比較的大きなスケールでは分子流の回転と考えられる運動を捉えることができたが、10"程度の小さなスケールでは、もう一つの別の分子流が検出された。このため、速度場は当初予想していた以上に複雑であり、小さなスケールでの分子流の回転をクリアーな形で検出することは難しいかもしれないということが分かった。しかしながら、この天体は大質量の原始星としては貴重なサンプルである。野辺山ミリ波干渉計(NMA)による一酸化炭素分子の同位体観測も遂行し、星のもととなるコアの運動状態を調べるためのデータも取得している。45m鏡による初期の結果はすでに論文として発表したが、NMAによる結果も検討し、改めて論文化したい。 GH_2O092.67+03.07に関しては、すでにNMAによる一硫化炭素のデータを保有している。この天体に附随する分子流は発生のごく初期段階にあり、5"程度の小さなスケールでもクラスタである証拠は見つかっておらず(単一の大質量星)、本研究の目的を遂行するためには大変適したターゲットである。平成13年度後半から、一酸化炭素分子輝線による観測をスタートさせた。この観測では、1"-2"の高い角分解能で分子流の運動状態を調べることが可能となる見込みである。観測は平成14年度初頭に終了するので、その後解析を行い、同年度末には結果をまとめたい。
|