恒星は一般に集団で生まれる。密集しているので、近接遭遇も経験し、その際の重力散乱で、星団は約数億年かけてばらばらになっていく。この時期、恒星のまわりには惑星が形成されつつあるので、原始惑星系は、このような他の星との近接遭遇を経験する。この遭遇が原始惑星系に与える影響を調べ、特に、近年観測がめざましいカイパーベルト天体の軌道分布との関連を調べた。 40〜47天文単位にあるカイパーベルトは、惑星や自らの重力ではつくり出せないような、非常に歪み(楕円がきつい)、傾いた軌道を持っていることがわかっている。われわれは軌道計算を行ない、これが太陽系形成時における他の星との(100天文単位程度まで近づいた)近接遭遇の影響である可能性が高いことを示した。近接遭遇の影響は太陽系外縁部において強く効き、100天文単位程度まで近づいた近接遭遇によって、30天文単位以遠では、大きな惑星の形成は不可能となる。これは30天文単位まで大きな惑星を有する現在の太陽系と調和的な結果である。30天文単位以遠では、軌道が大きく歪むので、天体は高速衝突を起こし、合体はせずに破壊を起こすことがわかった。他の恒星でもこのような他の星との近接遭遇を経験している可能性は高く、外縁部に惑星形成阻害領域が生まれ、そこでの破壊的衝突によるダスト生成が、主系列星ダスト円盤の形成につながっていると考えられる。観測によると主系列星ダスト円盤は一般に中心星から数十天文単位より外側に存在しており、それもわれわれの結果と調和的である。 この結果はアメリカ天文学会惑星科学部門および、力学的天体物理部門の学会で数回発表し、関連論文はアメリカ天文学会惑星科学部門学会誌"Icarus"に2つは発表済みで、2本を投稿中である。
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