研究概要 |
クエーサや活動銀河の中心核からだけではなくわれわれの銀河系内においても相対論的ジェットが観測されている。更に宇宙最大のエネルギー現象であるガンマ線バーストもローレンツ因子が100を超える相対論的ジェットにより説明されている。これらの相対論的ジェットはブラックホールの極近傍の激しい現象により形成されると考えられる。相対論的ジェットの形成機構を解明するためにわれわれは一般相対論的電磁流体力学計算コードを開発し数値実験を行ってきた。 平成14年度は相対論的ジェット形成における閉じた磁場の重要性を調べた。ここで閉じた磁場は電荷を持った回転するブラックホール(カーニューマンブラックホール)の持つ磁場により与えた。数値計算によりエルゴ領域(ブラックホール近傍の光さえもブラックホールと同じ方向にしか進めない領域)を閉じた磁場が貫くとき自発的に相対論的ジェットが形成されることを明らかにした。エルゴ領域を横切る磁力線は急激に捩じられその磁気エネルギーが磁束管に蓄えられる。磁気エネルギーが蓄えられた磁束管はその磁気圧により急速に膨張し,磁束管の膨張とともにプラズマは外側に加速されることになる。時刻t=9.7τs(ブラックホールが約3回転した時)での外向きの流れの最高速度は光速の70%である。今回は追跡時間が短く磁気張力によるプラズマの絞込みまでは見れなかった。より長時間の計算を行い相対論的ジェット形成機構の解明を進める。また,このようなブラックホールまわりのプラズマの加速・絞込現象はガンマ線バーストのモデルとしても有望であり,この方面への応用も考えたい。
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