星が形成されている現場である分子雲には大振幅の磁気流体波が伝播している。この磁気流体波は、分子雲が自己重力により収縮して星が形成されるのを妨げていると考えられている。言い換えると、磁気流体波が何らかの原因により減衰すれば、それにより星形成が促進されると考えられる。このような観点から磁気流体波の減衰率を数値シミュレーションに基づいた理論から推定する試みが近年盛んになった。しかしこれまでの数値シミュレーションに見られた磁気流体波の減衰は、数値粘性によるものを多く含んでいる可能性が高かった。また空間分解能が限られているために、波長空間でのダイナミックレンジも十分でなかった。数値粘性による減衰を評価するために、本課題では円偏光アルフヴェン波の解析解を利用した。この解析により、1波長あたり32点の格子点があると、ようやく数値粘性による磁気流体波の減衰を十分に小さくできることが明らかになった。これにより、1次元方向に256格子点の空間分解能をもったシミュレーションでも、計算領域の大きさの1/8以上の波長をもつ波だけが十分な精度で計算できることが示された。また本課題ではフィラメント状の分子雲中を伝播する磁気流体波について、その減衰が波長や偏光にどのように依存するか調べた。円偏光したアルフヴェン波は波長によらず一定の減衰率で指数関数的に減衰するのに対し、直線偏光したものは波長が短いほど速く、時間の逆自乗に比例して減衰する。これらの結果については国際会議でポスター発表を行った。また現在、学術雑誌に投稿の準備を進めている。
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