突発天体現象の発見と追跡システムの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640239
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 加藤 太一 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20283591)
• 研究分担者: 山岡 均 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (70243855)
• キーワード: 突発天体 / ガンマ線バースト / 激変星 / 超新星 / 新星 / ブラックホール

研究概要

本年度は、本課題で一貫して進めてきた可視光突発現象の発見・追跡を目的とした小型の専用望遠鏡と冷却CCD装置を有する観測システムを用い、ガンマ線バースト光学対応天体の早期観測、X線トランジェントや超新星・反復新星・激変星アウトバーストなどの突発的現象の追跡観測をさらに進め、世界の突発天体センターとして活躍しているVSNETの活動を総括する研究を行った。
本年度の最も注目すべき成果は、日本天文学会欧文報告誌における初めての単独特集の増刊号となる、VSNET特集号を発刊したことである(平成16年3月25日刊行)。この特集号には研究代表者を主著者とするVSNETの歴史・科学的成果・設計思想なども含めた総括論文を初めとし、計18本の原著論文を含むものである。この成果は突発天体現象研究の一つのエポックとなるものであり、今後の同分野の研究にも広く活用されるものと期待される。
本年度は、本グループが研究を進めたガンマ線バーストGRB030329の論文がNatureに掲載され、この成果は国内外でも広く報道されるものとなった。この現象はガンマ線バースト研究の近年最も重要な転換点となるものであり、本グループの早期観測と即時の情報公開は、国内外におけるガンマ線バーストの観測体制を飛躍的に推進するものとなった。
その他、VSNETの主導したブラックホール連星V4641 Sgrの活動の研究、WZ Sge型およびSU UMa型矮新星の詳細な研究、新星や反復新星の研究、激変星の食現象の研究、特異変光星の研究など、いずれも論文として出版された。
配分研究費のうち5万円は九州大学における画像処理用ハードディスクとして利用され、ガンマ線バーストや超新星ほかのさまざまな突発天体現象の解析に活用され、それらの成果は上記論文やIAUサーキュラーにおける報告としてまとめられている。

研究成果

• [文献書誌] T.Kato, M.Uemura, R.Ishioka, D.Nogami et al.: "Variable Star Network : World Center for Transient Object Astronomy and Variable Stars"Publ.Astron.Soc.Japan. 56(出版中). (2004)
• [文献書誌] T.Kato, R.Stubbings, B.Monard et al.: "V803 Centauri : Helium Dwarf Nova Mimicking a WZ Sge-Type Superoutburst"Publ.Astron.Soc.Japan. 56(出版中). (2004)
• [文献書誌] T.Kato, R.Ishioka, M.Uemura et al.: "V1494 Aql : Exlipsing Fast Nova with an Unusual Orbital Light Curve"Publ.Astron.Soc.Japan. 56(出版中). (2004)
• [文献書誌] T.Kato, P.Nelson, C.Stockdale et al.: "Photometric study of southern SU UMa-type dwarf novae and candidates--III : NSV 10934, MM Sco, AB Nor, CAL 86"Mon.Not.Royal Astron.Soc.. 347. 861-872 (2004)
• [文献書誌] T.Kato, D.Nogami, M.Moilanen, H.Yamaoka: "Superhumps in a Rarely Outbursting SU UMa-Type Dwarf Nova, HO Delphini"Publ.Astron.Soc.Japan. 55. 989-1004 (2003)
• [文献書誌] M.Uemura, T.Kato, R.Ishioka, H.Yamaoka et al.: "Optical Variability of the Afterglow of GRB 030329"Publ.Astron.Soc.Japan. 56(出版中). (2004)