本研究は近年大きな話題となっているガンマ線バーストの光学対応天体、ブラックホールX線新星を、激変星のように、最短数十秒から数日という、通常の天体現象の持続時間に比べて極めて短い「突発天体現象」の観測的解明を通じて、宇宙の活動現象の本質に迫るものである。 近年、これらの突発天体現象が可視光で驚くべき変動を示すことが判明しつつあり、本研究においては突発天体専用光学観測装置の開発、解析方法の確立、現象の追跡のための国際ネットワーク(VSNET)の整備・運用を行った。観測装置としてほ京都大学屋上に自動制御ドーム、九州大学に25cm望遠鏡とCCDカメラを設置、既存の設備と合わせて大きな科学的成果を挙げ、多数の科学論文を発表することができた。 特に注目すべき成果として以下のものが挙げられる。 (1)我々が1999年の巨大可視光爆発を発見したブラックホール連星V4641 Sgrにおける、従来予想だにされなかった可視光巨大変動の発見は、ブラックホール近傍を可視光で実際に「目でみる」可能性を拓くものとなり、世界的にも注目されている。 (2)本研究グループが研究を進めたガンマ線バーストGRB 030329の論文がNatureに掲載され、この成果は国内外でも広く報道されるものとなった。この現象はガンマ線バースト研究の近年最も重要な転換点となるものであり、本研究グループの早期観測とVSNETを通じた即時の情報公開は、国内外におけるガンマ線バーストの観測体制を飛躍的に推進するものとなった。 (3)日本天文学会欧文報告誌における初めての単独特集の増刊号となる、VSNET特集号を発刊した。この特集号には研究代表者を主著者とするVSNETの歴史・科学的成果・設計思想なども含めた総括論文を初めとし、多数の原著論文を含むものである。この成果は突発天体現象研究の一つのエポックとなるものであり、今後の同分野の研究にも広く活用されるものと期待される。
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