これまでの研究結果では、モンテカルロ直接法(DSMC)による3次元降着円盤の数値シミュレーションと、有限体積法による計算結果が異なるという問題点がある。 有限体積法においては、降着円盤は比較的高温で、そのため幾何学的にかなり厚く、L1流が降着円盤に貫入する。また渦状の衝撃波が発生する。 モンテカルロ直接法による計算では、冷却の効果を入れているため、円盤が薄く、L1流は貫入せず、円盤の縁で止まる。また渦状衝撃波があまり顕著に見られなかった。 前者の問題に関連して、有限体積法計算に輻射冷却の効果を入れる研究を試みた。円盤が薄いと仮定して、輻射流束は円盤に垂直な方向のみと考え、流速制限法(Flux Limited Diffusion)を採用した。結果はあまり思わしい物ではない。降着円盤のガス密度が低く、その結果、光学的に薄くなり、輻射冷却の効果がほとんど効かない。そのため円盤は幾何学的に非常に厚くなり、DSMCの結果とますます離れることになった。 渦状衝撃波のありなしに関しては、DSMC法では円盤周辺部のガス密度が低いため、粒子数が少なく、粒子間衝突が起こらず、流体性が保証されないからであろう。この問題を解決するために、現在、計算セルをデカルト直交座標から、たとえば円柱座標に変えることを検討している。 DSMC法で2次元軸対称問題を解く方法についても、考察を進め、良い方法を見いだした。これは今後、検討する。 降着円盤の問題と関連して、L1流を供給する伴星表面のガスの流れを有限体積法で数値シミュレーションした。その結果、70年代にLubouとShuが考察したように、さまざまな低気圧、高気圧が発生して、地球上の地衡風(Geostrophic wind)に対応する天衡風(Astrostrophic wind)が発生することを確かめた。
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