昨年度は近接連星系において降着円盤に質量を供給している伴星の表面における流れの3次元数値シミュレーションを行った。今年度はその流れの存在の観測的証拠を求める研究を行った。具体的には超軟X線源とよばれる天体について、そのドップラー図を求めた。そして、我々の提案する伴星の表面流があるとすると、観測されたドプラー図が説明できることを示した。従来の説では、質量供給星の質量は質量降着星の質量よりも小さいと考えられていたが、これは理論的予想と矛盾する。われわれは質量供給星の質量が質量降着星の質量の3倍あると、観測が矛盾なく説明でき、かつ理論的要請とも矛盾しないことを示した。 近接連星系において、質量供給星から高速の星風が吹き出している場合、質量降着星にその何パーセントのガスが降着するかを知ることは、連星系の進化を調べる際に重要である。われわれは質量比が1の場合について3次元数値シミュレーションを行った。臨界ロッシュ面における星風の速度によって、流れのタイプが3つに分類されることを示した。ガスの速度が連星系の軌道速度より小か、同程度か、速いかである。遅い場合はロッシュローブ溢れ流、速い場合は星風、同程度の場合は複雑な中間流になることがわかつた。質量降着率の実験式を求めた。 その他、ロシアの共同研究者と近接連星系の降着円盤の3次元数値シミュレーションを行い、渦状衝撃波について調べた。
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