研究概要 |
光電離されたガスでの原子衝突過程を定量的に調べ,とくに再結合放射によるスペクトル形成のメカニズムおよび放射冷却率を評価した. 1.コンパクト天体に降着するガスの不安定性を引き起こす要因を調べた中性子星の重力で降着円盤上に束縛されるガスについて,静水圧平衡と輻射輸送を組み合わせた解析を行った結果,温度が〜100eVの領域で普遍的に熱的および力学的不安定になりやすいことが分った.この不安定性が,鉄の再結合による放射冷却のピークに対応していることを確認し,鉄の元素比が太陽組成に比べて数分の1の場合や,ガス密度が小さく輻射による加熱が降着円盤の外側まで効いている場合は,電子熱伝導の効果でガスが安定化される可能性があることを明らかにした.これらの結果は学術雑誌に発表された. 2.降着ガスの特性は輻射による電離に起因するもので,電子温度に比べて高い電離状態が生じることで実現される.したがって,強い輻射を伴う他の高エネルギー天体でも同様のメカニズムが働くことが考えられ,例として,源天体が未だ知られていないγ線バーストに関連する現象を調べた.γ線バーストのアフターグローで観測されたX線スペクトルに降着ガスと同様の放射の特徴が見られることを指摘し,強いバーストによって電離された鉄を想定して,期待される放射スペクトルの計算を行った.その結果,観測された鉄の輝線と連続スペクトルを光電離-再結合放射モデルで整合的に説明できることを示すことができた.この結果は複数の研究会や国際会議で発表された他,学術雑誌にも発表された.
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