研究概要 |
1.本年度の実施計画に基づき、金属度[Fe/H]が+0.5から-3dexの範囲の金属欠乏星および金属超過星、総計62星について、硫黄組成解析を行った。用いた観測データは、岡山天体物理観測所、ケック10m望遠鏡で代表者らにより観測されたものと、これまでの文献から引用したものである。銀河系初期から現在までの歴史に対応している金属度の範囲において、[S/Fe]が[Fe/H]に対してどのように振る舞うかを、LTEとnon-LTE(NLTE)解析により調べた。主な結論は以下のとおりである:(1)硫黄の組成はNLTE効果にほとんど影響されない。(2)[S/Fe]は[Fe/H]が-3に向かって減少していくとき、傾き-0.25で連続的に増加していく。(3)この増加傾向は、銀河系形成初期に、通常の超新星ではなく極新星と呼ばれる大規模な超新星による大量の硫黄合成が行われたと考えれば、説明できる。これらの知見は60星あまりの大標本で、これまで不明であった硫黄の振る舞いを明らかにした、世界で初めてのものであり、アメリカ天文学会雑誌(Astrophysical Journal)に2002年中に掲載が予定されている。また、この研究については、2002年3月日本天文学会春期年会で、運動学的性質と関連させて発表する。 2.中国国家天文台において得られた中程度の金属欠乏星24星について、アルファ元素組成をLTE解析した。主な結論は;(1)[Si/Fe]と[Ca/Fe]は振る舞いが相関している。(2)運動学的性質から、3種類のグループに分類できる。(3)一般的なアルファ元素の[Fe/H]に対する振る舞いが確認された。この結果は、日本天文学会欧文報告集(PASJ)に掲載された。 3.すばる望遠鏡HDSを用いて得られた観測データにより、46Aqlという化学特異星の14種類の元素組成解析を行った。主な結論として;(1)これまで不明であったHe、C、N,O、は欠乏である。(2)PとTiは+1以上の超過、Sは-1.8の欠乏、Xeは+4の超過、などを初めて明らかにした。(3)これまで未同定であった、Asの吸収線を初めて固定した。 この結果は、日本天文学会欧文報告集(PASJ)に掲載された。
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