超高分解能光学域スペクトルに基づく赤色巨星の質量放出の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640247
• 研究機関: 国立天文台
• 研究代表者: 泉浦 秀行 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 助手 (00211730)
• 研究分担者: 野口 邦男 国立天文台, 光学赤外線天文学・観測システム研究系, 教授 (10111824)
• キーワード: 質量放出 / 星周 / C_2 / 炭素星 / ミラ型 / シリケイト / 白色矮星

研究概要

研究代表者の泉浦と研究分担者の野口は協力して、国立天文台・岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡と高分散エシェル分光器HIDESならびに国立天文台・ハワイ観測所のすばる望遠鏡と高分散分光器HDSを用いて得られた。光学炭素星の波長4500〜5500Åの領域の高分解能スペクトルの解析を引き続き進めた。その結果、前年度に明らかにした星周層起源のC_2分子ガスの存在は、炭素星大気上層部で豊富に存在すると考えられているC_2H_2分子が質量放出流として星周空間へ流れ出した際に、星間紫外線により光解離され生成されたものと考えられることを明らかにした。また、炭素星の紫外域スペクトルの探査をすばる望遠鏡とHDSを用いて進めた。その結果、酸素過多な環境で生成されるシリケイト系の固体微粒子に取り囲まれている炭素星の一つに、水素原子の出すバルマー系列線と連続波成分を検出し、秒速400km/sにも及ぶ質量放出流が存在していることを明らかにした。この放出流は、現在質量放出中の赤色巨星でこれまでに知られているうちで最も流出速度の大きなものである。さらにエネルギー収支の解析結果から、この星には白色矮星と考えられる伴星が存在し、そのまわりに降着円盤が形成されていると考えると考えるのが自然であることを明らかにした。これらの成果を2002年5月に宮城県仙台市で開かれた国際研究集会(MASS-LOSING PULSATING STARS AND THEIR CIRCUMSTELLAR MATTER)、ならびに2003年3月に北海道札幌市で開かれた国際研究集会(The International symposium on New Trends of Physics, PartII)で報告した。また、アメリカ合衆国、テキサス州にあるマクドナルド天文台の2.7m望遠鏡とクーデ焦点高分散分光器2dcoudeを用いて、ミラ型の変光型を持つ炭素星3星について4500〜6500Åの高分解能スペクトルを取得し解析を進めた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Takeda et al.: "Iodine-Cell Spectroscopy at Okayama Astrophysical Observatory : First Results"Publications of the Astronomical Society of Japan. 54,1. 113-120 (2002)
• [文献書誌] H.Imai et al.: "Detections of SiO Masers from the Large-Amplitude Variables in the Galactic Nuclear Disk"Publications of the Astronomical Society of Japan. 54,2. L19-L22 (2002)
• [文献書誌] W.Aoki et al.: "Chemical Composition of Carbon-Rich, Very Metal-Poor Subgiant LP 625-44 Observed with the Subaru/HDS"Publications of the Astronomical Society of Japan. 54,3. 427-449 (2002)
• [文献書誌] Y.Takeda et al.: "Detection of Zinc in the Very Metal-Poor Post-AGB Star HR 4049"Publications of the Astronomical Society of Japan. 54,5. 765-773 (2002)
• [文献書誌] B.Sato et al.: "Development of Iodine Cells for the Subaru HDS and the Okayama HIDES : II. New Software for Precise Radial Velocity Measurements"Publications of the Astronomical Society of Japan. 54,6. 873-882 (2002)
• [文献書誌] E.Kambe et al.: "Development of Iodine Cells for the Subaru HDS and the Okayama HIDES : I.Instrumentation and Performance of the Spectrographs"Publications of the Astronomical Society of Japan. 54,6. 865-871 (2002)