研究概要 |
本研究の目的は、コンパクトで若い電波銀河のサイズとスペクトルを観測して、進化初期段階にある電波銀河の環境を統計的に調べることである。電波銀河はGHz帯より低い周波数で吸収を受けたようなスペクトルを示すが、これが電波ローブを取り巻くプラズマで発生する自由-自由吸収(FFA)に起因するものであることが分かっていたが、その空間分布などは不明だった。そこで、スペースVLBIやVLBAを用いて若い電波銀河を多周波で観測することによって、FFAの光学的厚みの空間分布を調べ、電子温度や密度,サイズを調べるという手法を考案した。 本研究では18個の若い電波銀河について5つの周波数で観測を行った。観測結果について、現在解析を進めている段階である。そのうちNGC1052の観測結果からは、FFAの原因となる低温(〜10^5K)・高密度(〜10^4cm^-3)のプラズマが半径0.7pcのトーラス状に中心核を取り巻いているという構造が明らかになった。この結果は、等方的に降着してきた物質が0.7pc付近の領域で回転によって支えられるという力学的な遷移を示唆している。本結果はKameno et al. 2001,PASJ53,169で出版済みである。 また、吸収がシンクロトロン自己吸収ではなくFFAによって起こっているということを、偏波観測を多数の若い電波銀河について行うことによって示した。偏波角がスペクトルのピークをまたいでもジャンプしないということを統計的に明らかにしたもので、この結果はMutoh et al. 2002,PASJ54,131に出版済みである。
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