研究概要 |
現存の解析手法では不可能であった高エネルギー電子と航跡場の自己無撞着解析の可能性を有する時間領域境界積分方程式法(TDBEM)に関する開発を行なってきた.とりわけ同計算手法では,大容量メモリおよび長時間計算が必要となるという深刻な困難さがあったのに対し,このTDBEMのもつ特有の行列構造に着目し,この特徴を生かしたパラレル計算スキームを実現することによりこれらの深刻な困難を回避すべく,MPIパラレル計算システムの構築を行なってきた. 初年度におけるPCLANによるMPI計算環境(PC 5台)の構築およびそこでの基本的な動作確認につづき,本年度は,実際に現有のシングルCPU環境上でのTDBEMのコードを,MPIパラレルスキーム化,メモリ分散化,さらに,コードの流用性確保のためのシングル・パラレル同時対応化を行なうべく検討を行なった. 本年度の研究により,まず,MPIパラレルスキーム化に関しては,コードのモジュール構成を工夫することによりPC間の交信回数を最小限に押さえ,PC LAN環境にありながら理想最大性能の約85%程度の性能のスケーラビリティを得ることができた.またメモリ分散に関しては,分散化することでほぼPCの台数に完全に比例して大規模問題を取り扱えることが実証され,実際,これまでは到底不可能であった4セルの加速空洞の構造をTDBEMにて解析することができた.さらにシングル・パラレル同時対応化についても,MPI固有のサブルーチンの呼び出しインターフェースを一本化することにより,最低限の変更にてシングル-パラレル環境の切り替えが可能となる方式を考案し,今後のコードの流用性を確保した. 以上をもとに研究計画最終の次年度は,現存の軸対称系コードの3次元化等を行なうことにより,当初目的のコヒーレントシンクロトロン放射などの具体的な重要な問題に適用すべく,コードを完成させていく予定である.
|