研究課題/領域番号 |
13640253
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滝川 昇 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00125600)
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研究分担者 |
田澤 輝武 山口大学, 理学部, 教授 (80091198)
中務 孝 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40333786)
小野 章 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20281959)
萩野 浩一 京都大学, 基礎物理学研究所, 助手 (20335293)
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キーワード | 量子拡散 / トンネル効果 / 超重核 / 重イオン核融合反応 / 天体核反応 / fusion-fission / 遮蔽効果 / 揺動散逸定理 |
研究概要 |
1.クーロン障壁近傍及び以下での重い原子核同士の核融合反応及びFusion-fission反応の断面積(核融合障壁透過断面積)を理論的に評価する新しい方法として、二重畳み込みポテンシャルに基づく結合チャネル法を開発した。2.その有効性を検証する為、精度の良い実験データが存在する^<16>O+^<154>Sm散乱に適用したところ、^<154>Smの基底回転帯を考慮した結合チャネル計算によって、クーロン障壁を挟む広範な入射エネルギー領域に渡り、核融合反応断面積の実験値を再現する事に成功した。3.更に、所謂核融合障壁分布の解析を行ったところ、実験データと今回の計算結果の間には定性的な不一致が存在し理論の改良の必要性が示唆された。4.超重元素生成反応断面積を評価する為に開発中の量子拡散方程式では、通常の揺動散逸定理が破られる事の他に、非マルコフ効果を反映して、通常の拡散方程式には存在しない新たな項が現れる事を明らかにした。5.低エネルギーでの重イオン核融合反応及び天体核反応を、所謂、spurious correlationの問題を避けて精度良く計算するための半古典的平均場量子トンネル理論を開発した。この方法は、入射核と標的核の相対運動を古典的に取り扱い、それに影響を及ぼすそれ以外の自由度を量子力学的に取り扱う方法である。後者は、重イオン散乱では原子核の内部運動、天体核反応では、遮蔽効果を引き起こす電子の自由度を表す。6.開発した理論を、D+d散乱、^3He+d散乱ほか幾つかの散乱系における遮蔽効果の解析に適用し、環境の自由度が動的自由度であることを反映し、結合チャネルの効果(天体核反応では遮蔽効果)は、遮蔽効果の解析で通常行われているように、入射エネルギーに依存しない静的なポテンシャルの繰り込みでは表現できない事、及び、チャネル結合効果を正しくとり入れた断面積の計算には、トンネル領域の時間発展を露わに取り扱う必要がある事を明らかにした。
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