1)カムランド実験においてウラン、トリウムなどの放射性不純物除去のため、純化装置に組み込まれている、超純水による液液抽出と窒素パージ法がどの位有効か確認する研究を行ない、プラズマ誘導質量分析と中性子放射化法によるウラン、トリウム、カリウムのレベルが実験の要求を満たすことが確認された。今年度はこの分析感度をさらに向上させることを試みたがサンプル処理時や容器の微量汚染を抜本的に解決するには至らなかった。しかし、カムランド実験が開始され検出器より得られたデータから、ウラン、トリウム系列に属するビスマス、ポロニウムの崩壊連鎖事象を調べた結果、ウランは(3.5+-0.5)^*10^<**>(-18)g/g、トリウムは(5.2+-0.8)^*10^<**>(-17)g/gと目標値10^<**>(-14g/g)をはるかに下回る極めて低い量であることが確認された。また放射性カリウムの量も2.7^*10^<**>(16)g/g以下であり、充分低い事が改めて確認された。この結果はカムランド実験に用いられた液体シンチレーターの純化方法が正しく微量放射性不純物の除去に有効であることを示した画期的な成果となった。 2)カムランド実験で1MeV以下の低エネルギー事象の検出に必須の放射性鉛、放射性クリプトンの除去に対して、現在の純化方法の有効性を調べる研究を進めた。クリプトンには減圧窒素パージ法が有効であることがわかり、現システムのアップグレードに向けた装置のデザインが進められることになった。鉛は液液抽出の基礎データを得るべく、水溶性鉛化合物(硝酸鉛、酢酸鉛)を用いて鉛イオンの水とミネラルオイルの分配係数の測定を行なった。また、トリウム系ラドンを液体シンチレーターに溶かしてその崩壊系列の鉛を直接シンチレーション光で測定する方法も同時に進めている。現在、最終結果に向け確認試験を行なっている。
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