1)平成13年度:カムランド実験における高感度ニュートリノ検出に必要な、ウラン、トリウムなどの放射性不純物を検出器の液体シンチレーターから除去するための液液抽出法と窒素パージ法について、プラズマ誘導質量分析法と中性子照射化法による液の高感度分析を行ない、原子炉ニュートリノ実験の目標である10^<-13>g/gを下回る濃度が確認された。分析感度の更なる向上には、試料作成時の汚染を徹底的に除去することが必要であるが、これを解決するには至らなかった。しかしカムランド実験の実データの解析により、Bi-Poの崩壊連鎖による放射能がウラン系列で0.035μBq/m^3トリウム系列で0.17μBq/m^3であり、^7Be太陽ニュートリノ検出に必要な1μBq/m^3をはるかに下回る低い濃度であることが明かとなった。 2)平成14年度:それまでの研究で明らかとなった1MeV以下の低エネルギー部に存在する放射性バックグラウンドを除去するための実用的な純化法の開発に研究の重点を移した。これはカムランド検出器を一層高感度化し、さらにエネルギーの低い7Be太陽ニュートリノの実時間検出を目指すための開発研究であり、その除去と確認は表裏一体をなすものである。対象となるのは検出器の液体シンチレーター中に微量に残る半減期10年以上の放射性不純物であり、なかでもウラン系列の鉛210と放射性クリプトンが支配的である。その除去に従来の液液抽出、窒素パージ法がどのくらい有効かを調べた。その結果、鉛210の除去には液液抽出法のみでは有効でなく新たな除去法の開発が必要であることが判明した。また窒素パージ法は、実機を目指したテストプラントの設計、製作を行なった。 3)平成15年度:テストプラントによる窒素ガスパージ法のテストを行ない、クリプトン、ゼノンガス除去の有効性が認められた。しかし地下実験室空気にはラドンが高濃度で存在し、微量ながら侵入するラドンの除去の重要性が改めて認識された。今後、気液接触効率、減圧、脱気など、処理条件を変え、きめ細かく調べる必要があり、これからの課題である。鉛210の除去について、吸着剤、フィルター、液液抽出とそれらの組み合わせ、そして蒸留法につき広範なテストを行なった。その結果蒸留法は極めて有効な知見が得られつつ有る。今後液体シンチレーターの発光特性への影響や、実用性につき更に研究を行なうことが課題である。
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