研究概要 |
非可換空間上の場の理論の本質は,やはり曲率を持った空間上での理論に現れると考えられる。しかし,平坦な空間,特に4次元の場合ゲージ理論のインスタントン解の構成などが非可換空間上の理論にすなおに拡張できたことに比べると,曲がった非可換空間上の研究は困難である。この原因の一つに,簡単に扱える例が少ないことにある。一方,曲がった空間の例である量子球面の解析では,その表現空間の有限性のために,格子ゲージ理論とよく似た性質を示すことがわかり,カイラルフェルミオンの性質を研究することによって,有限化された場の理論の一般的性質の解明にも役立つことが分かってきた。このため,さらに一般な非可換空間の例の研究が望まれる。 今回我々は,従来の2次元の量子球面の拡張として量子化されたCPnの関数環を取り上げ,その上でのゲージ場の配意の解析を行った。CPn,つまり複素射影空間は原理的には,その複素構造から得られるポアッソン括弧を使って量子化することができる。しかし,量子化したのちに大域的な調和関数環を量子化した代数が得られるが,その代数の生成元の間の拘束条件が複雑なために,その上でのゲージ場の配位の解析などを行うことができなかった。そこで,まずさまざまな形の量子化の方法を比較することにより,拘束条件の解析を行い,同時に一方で,非可換球面上のバンドルの構成に使われた手法を一般化し,より複雑な系への応用が可能になる手法の研究を行った。これらの研究を組み合わせることによって,非可換CPn上の非自明なラインバンドル(線束)に対応する射影加群を構成する方法が解明できた。この結果,非可換CPnにおけるゲージ場の配位のうち,すべての量子数をもつモノポール解に相当する配位の構成に成功した。論文は執筆中だが,その結果をすでに国際会議(Keio, Yokohama,2/26-3/3 2004)で発表した。
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