計画初年度である今年度は、次年度の本実験に向けて基本装置の設計と製作を行った。本研究の目的は、重陽子がクーロン力で分解して生成される陽子と中性子を高精度で測定し、反応機構を解明して天体核反応に応用する事である。ここで陽子・中性子測定に必要となる磁気分析器は、角度分解能を損なわないよう収束要素を持たず、陽子・中性子を重陽子ビームと空間的に十分に分離し、かつ広い測定角度範囲をカバーできるものでなければならない。また陽子エネルギーが低いので、多重散乱による分解能悪化を避けるため、粒子軌道を可能な限り真空に保つ必要がある。分析器にはビーム輸送系偏向磁石として設計された双極電磁石を流用する計画であるが、中心軌道を外れる陽子軌道に沿った磁場分布が不明であるので、3次元磁場計算および軌道解析を行い、最適な散乱真空槽の形状を設計した。本年度予算の大部分は真空槽の製作にあてられ、今年度末に納品された。来年度から真空槽の据え付け及びビームラインの構築を行う一方、双極電磁石の実際の磁場測定を行い、実験に取り掛かる予定である。
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