昨年度作成した真空槽を中心に、ビームラインの構築を大阪大学核物理研究センターにおいて行い、実際の実験を行った。本研究の目的は、重陽子がクーロン力で分解して生成される陽子と中性子を高精度で測定し、反応機構を解明して天体核反応に応用する事である。陽子・中性子測定に必要となる磁気分析器や陽子飛跡追尾用検出器・中性子検出器および真空装置は、核物理研究センターの既存品を流用した。実験に先立ち、双極電磁石の実際の磁場測定を行い、3次元磁場計算の精度向上を図った。実験は概ね予定通り行われ、低予算ながら、これまでに無い高精度の分解能を持つ陽子-中性子角度相関の詳細なデータが、種々の標的に関して得られた。現在データ解析が進められており、その一部は国内学会・研究会で発表されている。予備的な結果では、クーロン歪曲波の影響は^<208>Pbのような重い標的と^<90>Zr以下の中重核標的との間で明確な違いがあり、軽核と中重核では断面積の大きさを除いて角度分布は非常に良くスケールされるという予想外の振舞いが観測された。今後はシミュレーションによるデータ精度の系統的評価を行い、また新しいアイディアに基づく理論的枠組みのヒントも得られているので、理論解析方法の開発も平行して進めて行く予定である。
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