研究概要 |
昨年度の実験で得られたデータの詳細な解析を行った。本研究の目的は、重陽子がクーロン力で分解して生成される陽子と中性子を高精度で測定し、反応機構を解明して天体核反応に応用する事である。測定結果の系統的な精度は中性子検出器の効率で支配されるため、^7Li(p, n)^7Be反応を用いた実験的な較正の他に、最新の中性子反応データを用いた検出効率のシミュレーションを行う等、特に入念な解析を行った。また、磁気分析器の詳細な3次元磁場データから陽子軌道の解析を行い、エネルギーの絶対値および散乱角度の系統的精度の検討を行った。その結果、これまでに無い高精度の分解能を持つ陽子-中性子角度相関の詳細なデータが、種々の標的に関して得られ、クーロン歪曲波の影響は^<208>Pbのような重い標的と^<90>Zr以下の中重核標的との間で明確な違いがあり、軽核と中重核では断面積の大きさを除いて角度分布は非常に良くスケールされる事がわかった。これは、純粋なクーロン分解を仮定した計算から期待される滑らかな標的依存性と大きく異なっており、非常に興味深い。一般には、核力による分解との干渉効果が考えられるが、核力を含む理論計算は格段に難しく、広い角度範囲を覆う計算の実行は困難である。本研究では新しいアイディアとして、歪曲波の平面波展開と制動放射行列要素の解析解を組み合わせた計算方法を提案し、実験結果の傾向を説明する事を試みた。
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