研究概要 |
超新星爆発での元素合成過程の計算に必要な不安定核の放射性中性子捕獲反応断面積を逆反応であるクーロン分解を使って求める事が近年行われているが、その反応機能の扱いは未だ不定性が大きい。本研究の目的は、安定ながら弱く束縛された原子核である重陽子のクーロン分解を高精度で測定し、反応理論の発展に資する事である。そのためには、放出される陽子・中性子のエネルギー・角度分布を広い範囲で且つ高精度に測定する必要があり、既存の磁気分析器では測定不可能であったため、大阪大学核物理研究センターに新たなビームラインおよびスペクトログラフ系を建設した。分析磁石はビームラインマグネットを流用し、既存のワイヤー検出器・中性子検出器を有効活用する事により、低予算ながら、これまでに無い高精度の分解能を持つ陽子-中性子角度相関の詳細なデータが4種の標的(^<12>C,^<40>Ca,^<90>Zr,^<208>Pb)に関して得られた。結果として、軽核と中重核では断面積の大きさを除いて角度・エネルギー分布が非常に良くスケールされるのに対し、^<208>Pbのような重い核と^<90>Zr以下の中重核標的との間ではクーロン歪曲波の影響に明確な違いのある事がわかった。これは、これまでの純粋クーロン分解を仮定した計算から期待される滑らかな標的依存性と大きく異なっており、非常に興味深い。一般には、核力による分解との干渉効果が考えられるが、核力を含む理論計算は格段に難しく、広い角度範囲を覆う計算の実行は困難である。現在、新しいアイディアとしてクーロン・フーリエ変換による方法を試みている。
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