研究概要 |
本年度は,γp元素合成過程に関与する陽子過剰核の構造に関連して,次のような研究を行った。 ●我々が指摘してきた残留相互作用の陽子・中性子間の非対称性を考慮に入れて,A〜20領域の原子核に対してThomas-Ehrmanシフトの理論的評価を行った上で,分光学因子やGamow-Teller遷移確率を計算して殻模型波動関数に対する影響を調べた。これらはγp過程に直接関わり得る重要な知見である。 ●我々が先に明らかにした,N=82核におけるisomerがZ=64 coreの硬さのよい指標となるという知見を発展させ,N=81及びN=83核で観測されているhigh-spin isomerのE2遷移確率がZ=64 coreからの励起をどのように反映しているかを調べた。これにより,陽子過剰領域でのZ=64 submagic numberに対する理解を深めることができた。 ●不安定核におけるmagic number変化のmechanismを理解するため,不安定核の取り扱いに留意した新しいHartree-Fock計算のalgorithm及びそれに基づく計算codeの開発を行った。この手法は今後,陽子過剰核の構造を知りγp過程の可能性を調べる上で重要な役割を果たすものと期待される。
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