研究概要 |
rp元素合成過程に関与する陽子過剰核の構造に関連して,次のような研究を行った。 ・実験グループとの協力の下,T=1の3重項を成す^<26>Mg,^<26>Al,^<26>Siについて,Gamow-Teller遷移及びisovector型M1遷移の詳細な比較により,isospin対称性の検証等を行った。特に,殻模型計算に基づく理論的立場からの検討を担当し,^<26>Mg(^3He,t)高分解能実験より得られたGamow-Teller遷移強度を殻模型計算の結果と比較したほか,M1遷移における軌道部分の寄与の評価等を行った。この研究を通じて,sd殻領域の安定核と陽子過剰核の実験データを総合的に取扱うことにより,isospin対称性の波動関数レベルでの詳細な検証,また磁気的性質及びβ崩壊を個々の成分に分解した詳細な研究が可能であることを示した。 ・Drip line近傍での殼構造についての理解を深めるため,殻模型計算により^<68>Ni周辺の核構造について調べた。実験グループとの協力の下,特に磁気的性質に焦点を置いた研究を行い,^<68>CuのM1遷移確率に関する新しいデータと^<67>Ni,^<69>Cuも含めた磁気モーメントのデータを併せ用いて,f_<7/2>殻からの陽子励起の影響について議論した。 ・原子核,特に不安定核の殼構造等をよりよく理解するため,平均場近似の下で原子核の有効相互作用について再検討を行った。Spin-isospin自由度が殼構造に影響しえること,従来の相互作用が必ずしもspin-isospin応答を再現しないことを示し,同時にspin-isospin自由度についても妥当な性質を持つ,新しい有効相互作用を開発した。さらにこれを用いて,N=16及びN=32近傍の殼構造について理論的立場から調べ,spin-isospin自由度,特にπ中間子交換が殼構造の変化に対して一定の効果を持つことを確かめた。今後,これらの知見を基に陽子過剰核の殼構造について調べる予定である。
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