研究概要 |
rp過程に関与する陽子過剰核の殻模型および平均場近似理論による研究のほか、その微視的記述に不可欠である殻模型にもとづく計算コードの開発がなされ、その有効性の確認もかね種々の原子核構造への応用が行われた。 1.軽い陽子過剰核の構造 鏡映核における核力の荷電対称性の破れ、いわゆるThonas-Ehrman shiftの原因を弱束縛のs(1/2)陽子に求め、A=17核をはじめとしてhotCNOサイクルに関与する可能性のある原子核構造研究に新展開を行った。 2.N=82近傍核の構造 Ba-136原子核におけるアイソマーが、原研グループによる実験的研究であきらかになった。開発された殻模型コードを用いて、Ba-136原子核をふくめたN=80isotoneをSn-132核を芯とみなした配位で統一的記述を行い、J=10+状態がアイソマーとして再現され、その出現機構が判明した。 3.平均場近似による陽子過剰核の研究 特に不安定核の殻構造を理解するため,平均場近似の下で原子核の有効相互作用について再検討を行った。Spin-isospin自由度についても妥当な性質を持つ新しい有効相互作用が,安定核について従来のSkyrme相互作用やGogny相互作用と同様の結果を与えることを確かめる一方,N=16及びN=32近傍で異なる殻構造を与え,これが最近の実験と矛盾しないことを示した。 4.殻模型計算コードの汎用性の拡大 jj-結合方式殻模型にもとづく原子核構造の微視的記述用の計算プログラムの開発を行ってきたが、今年度はこの計算コードの汎用性を高めるため、陽子過剰な原子核のみならず、種々の核への適応や、種々の手法との融合を試みた。その一つはランダムな相互作用を用いた原子核ハミルトニアンの性質の研究で、特定核を1000回繰返して行う必要があり、高速性が要求される。今回開発したコードこの要請に十分答えるものであった。またハイパー核への応用も行い、ガンマ線によるハイパー核生成実験の可能性を得るなど、計算コードの有効性を確認した。
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