今年度は、まず量子統計力学の基礎的な側面を考察し、過去に提案していたスキームを精密化して雑誌の発表した。これは、Shannonの情報理論における推測の理論でもって統計力学の基礎的な仮定である等重率の原理の一部を置き換え、熱平衡への緩和を従来とは違った角度から理解しようとする試みである。 さらに、スピンと統計の定理を経路積分の定式化でどのように証明するかの処方を与えた。これは古くから知られていた定理の再考察であるが、特に新しい点は負のエネルギーが存在しないということをFeynmanのm-iε処方で表現することを提案したことである。すなわちFeynmanのm-iε処方は、経路積分では導く必要はなく、むしろエネルギー条件として要請することを提案いたことである。こうすることにより、スピンと統計の定理の証明は非常に明快になった。 第3の研究テーマとしては、一般化した格子上のフェルミ演算子の可能性を考察した。とくに、負でない整数Kにより特徴付けられた無限個のフェルミ粒子の演算子の可能性を指摘し、この演算子の局所性の研究を行った。具体的に構成した無限個のフェルミ演算子が自由場の場合実際に局所性を満たすことを証明し、さらにゲージ場が存在する場合にも考察を広げた。この結果、このような無限個のフェルミ演算子は格子理論としての最低限の要請は満たしていることが示された。
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