研究概要 |
弦理論の非摂動論的な概念として最も重要と思われる励起として、Dブレインというものが考えられている。Dブレインは共形場理論の立場からみると、開いた弦の可能な境界条件という特徴付けをすることができるが、それは摂動論的なみかたであって、より本質的な理解を行うためには場の理論の古典解としての解釈がどうしても必要である。最近この観点から弦の場の理論を用いてDブレインを説明しようとする試みがなされている。当研究の目的からみてもDブレインがどのような幾何学的な電荷を持つかというのは中心的な課題であり、弦の場の理論の古典解をその荷電でどのように特徴づけるかは、大変重要であると考えられる。 本年の研究ではこの観点から、Rastelli, Sen, Zwiebachの提案についての研究を行った。具体的には彼らはDブレインを一種の射影演算子としてとらえることを提案しているが、私はその射影演算子が平坦な空間を仮定する特定の共形場理論に限定されるのではなく、一般の曲がって空間にも構成可能であることを議論した。また彼らはSliverと呼ばれる特定の射影演算子を用いているが恒等演算子を用いた構成がよりもっともらしい振る舞いを行うことを提案した。さらに彼らは物質場とghost場が分離する解のみを考えたが、そうでない別の形の解を用いた方が、ブレインの上で定義される開いた弦を記述する上ではより自然であることを提案した。 より具体的な提案に向けてUSCのBars氏との共同研究を始めた。この共同研究では弦の場の理論を非可換幾何学として定式化を行うことを考えている。その最初のステップとして非可換幾何学と場の理論の食い違いの原因となるAssociativityの破れについて議論を行った。
|