研究概要 |
一般相対論的数値シミュレーションコードを用いて,連星中性子星の合体の数値シミュレーションを実行し,その際に放射される重力波について調べた。本年度は,まず,シミュレーションコードに残っていたいくつかの不安定性を取り除くため,コードの改良を行った。特に,数値境界での重力波の反射を押さえるために,差分かの方法などを修正した。それでも数値境界が中心の星からかなり近くにある場合には問題が残ることが明らかになった。そこで,グリッドサイズをx, y, z各方向に約1.5倍としてみたところ,問題がなくなった。さらに,時間発展方程式と楕円型方程式を解く部分のチューニングを進めて,計算時間の短縮に勤めた。これにより,グリッドサイズとして500×500×250を用い,適切な計算時間でシミュレーションの実行が可能であることが明らかになった。われわれが用いたコードの特徴は以下の通りである。 1.計量テンソルの時間発展方程式の数値解法にCIP法を適用する。一般相対論的流体力学方程式の解法には,van Leerのスキーム+TVD法を用いる。 2.数値境界における境界条件として波動条件を適用するとともに,数値境界を十分外に持っていくことにより,数値境界における重力波の反射を押さえる。 3.座標条件としては,時間座標に対してmaximal slicing条件,空間座標に対しては,pseudo-minimal distortion条件を用いる。これらは,いずれも複雑な楕円型方程式を導くが,その解法には,Neumann型の前処理付きの共役勾配法を用いる。 4.上記の方法はいずれも,ベクトル化,並列化が可能で,非常に効率良いプログラミングができる。maXimal slicing条件を用いると,放射される重力波の取り出は単純ではなくなるが,そのためにケージ不変な重力波抽出法を用いた。ここでは,バックグラウンドとしてシュバルツシルド時空を仮定したが,十分良い精度で重力波を取り出すことができた。
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