1.我々は最近のGamow-Teller巨大共鳴状態の実験を解析し、原子核のスピンに依存するランダウ・ミグダルパラメータの値を初めて決定した。特に、核子とデルタ粒子間のランダウ・ミグダルパラメータは、今までの予想に反して非常に小さいことを明らかにし、スピンに関する原子核物理の新たなステップを築いた。 2.原子核の電子散乱やニュートリノ散乱を理解するためには、相対論的なランダウ・ミグダルパラメータが必要である。我々は非相対論的な現象であるGamow-Teller巨大共鳴状態から決められたパラメータを相対論的に拡張する手法を研究中である。 3.最近2重巨大共鳴状態が発見されたが、我々はそれらに対する模型に依らない和則を導き、2重巨大共鳴状態を理解するための基本となっている。更に、フランスのGANILでは3重巨大共鳴状態の探索が行われ、現在実験の解析が進行中である。我々はこれと平行して、3重巨大共鳴状態に対する模型に依らない和則が存在するかどうかを研究中である。3重巨大共鳴の研究は2重巨大共鳴の実験で示された和則値との矛盾を解く上で重要なものとなるであろう。 4.単極子巨大共鳴状態の励起エネルギーを相対論的模型で計算するとき、反核子の自由度が重要であることは我々や、Giai、Ringのグループによって明らかにされた。しかし、励起エネルギーは反核子の自由度をもたない非相対論的模型でも説明可能である。我々は相対論的模型と非相対論的模型の違いを明確にするために、両者が異なる結果を与える物理量を探した。その結果、電子散乱のある種の弾性散乱と準弾性散乱の応答関数に違いが現れることを示した。準弾性散乱の実験はアメリカのJLABで計画中である。
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