超弦の場の理論の新しい定式化

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640277
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 二宮 正夫 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40198536)
• 研究分担者: 川合 光 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80211176)
• キーワード: 超弦理論 / 場の理論 / 超弦の場の理論 / ブレーン / ゲージ理論 / 超弦の行列模型 / 非摂動的方法

研究概要

素粒子の4つの基本相互作用(電磁気力、弱い力、強い力及び里方)とあらゆる素粒子(クォーク、電子、ニュートリノ…)を統一的に記述するという統一理論の唯一の候補として超弦理論が研究されてきた。しかしながら、超弦理論を摂動論的に定式化すると、無数の真空が存在して、その各々に対応してモデルが構成でき、本当の真空にもとづく唯一のモデルを発見することができない。そのため超弦理論の非摂動論的な定式化が必要不可欠と考えられ多数の研究が行われている。一方、これまでの超弦理論は第一量子化の理論として定式化されており、超弦の生成・消滅を含む物理過程に対する物理量を作用関数からシステマティックに計算することはできない。このような欠点を除くには、第2量子化にもとづく超弦の場の理論が必要である。
当研究代表者(二宮)はH. B. Nielsen氏と共同で超弦の第2量子論である超弦の場の理論の構成を研究してきた。この構成に関しては過去に既に数グループ(Kaku-Kikkawa, Hikko, Witten等)が各々モデルを提唱し一定の成果を得てきたが、一般共変性を失っている等の欠陥が知られており、未だ完成していない。当研究代表者とH. B. Melsen氏は共同で、超弦の場の理論を樽成するために、基本構成要素として超弦のright-movingモードとleft-movingモードを選び、これら2つのモードから超弦のFock空間を構成する。任意個の超弦をもつ状態はこれら2つの自由粒子のFock空間の直積であらわせると考えられる。
共同研究者の川合は超弦理論の非摂動的定式化をゲージ理論によって実行する研究を行った。この目的のためにまず不安定なブレーンと基本的超弦は、あるゲージ理論の古典解としてあらわせることを示した。更に、不安定ブレーンはゲージ場に結合するスカラー場のドメインウォールとして、また基本的弦はバルクに閉じ込められたフラックスチューブとして表されることを見出した。更にタイプIIBと呼ばれる超弦の行列模型を構成し、そのダイナミクスを研究した。またこの定式化の背後にある非可換幾何学の時空の性質を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Holger B.Nielsen, 二宮正夫: "A New Type of String Field Theory"In the Proceedings of 10^<th> Tohwa International Symposium on String Theory, Fukuoka. Japan 3-7 Jul.2001. American Institute of Physics. 185-201 (2001)
• [文献書誌] 川合光, 河本祥一, 他2名: "Improved Perturbation Theory and Four-Dimensional Space-Time in IIB Matrix Model"Prof. Theor. Phys.. 109. 115-132 (2003)
• [文献書誌] 川合光, 河本祥一, 他2名: "Mean Field Approximation of IIB Matrix Model and Emeroence of Four Dimensional Space-Time"Nucl. Phys.. B647. 153-189 (2002)
• [文献書誌] 川合光, 東武大: "Matrix Model with Manifest General Coordinate Invariance"Phys. Lett.. B538. 393-405 (2002)
• [文献書誌] 川合光, 黒木経秀: "Strings as Flux Tube and Deconfinement on Branes in Gauge Theories"Phys. Lett.. B518. 294-300 (2001)
• [文献書誌] 川合光, 東武大: "OPE between the Energy Momentum. Tensor and the Wilson Loop in N=4 Super Yang-Mills Theory"Prog. Theor. Phys.. 106. 255-292 (2001)