今年度の研究実績は次の通りである。 1.我々の4次元世界が実は、より高次元時空中での3-braneであるという、いわゆるブレーン世界シナリオを真面目に研究する準備として、一番簡単な5次元時空を考え、余分な1次元がオービフオルドS^1/Z_2にコンパクト化した場合の、超共形テンソル計算則(superconfomal tensor calculus)を与えた。特に、バルクの超重力多重項や物質場多重項が境界面上でどういう4次元超共形多重項と同定されるのかを明らかにすることにより、境界4次元面上の物質場とバルク超重力場物質場との超共形対称な結合のさせ方を一般的に明らかにした。 またもう一つの論文では、これまでon-shellでしか知られていなかった5次元のテンソル超多重項に対し、ゲージ多重項と非ゲージ多重項の2種類があることを初めて明らかにし、そのoff-shen超共形テンソル計算則を全面的に与えた。 2.大統一理論では、通常のHiggs doubletが軽いのに、そのcolored partnerは10^14倍以上も大きな質量をもたねばならないという、いわゆるtriplet-doublet splittingの問題がある。この問題に対して、通常のHiggs doubletだけがPseudo-南部-Goldstone粒子であるため軽くなるのだというアイデアがある。このアイデアはこれまで、SU(6)大統一理論の枠内で考えられていたが、我々の論文では、ストリング理論の示唆するE_6にもとづく大統一理論の枠内で考えた。その結果、E_6大統一理論の場合には、Higgs doublet以外に必ず他の軽いPseudo-南部-Goldstone多重項が現れること、また、それがゲージ結合定数の統を破らないためには、SU(5)の10.+10^*表現になるのが唯一の可能性であること、さらに、その存在は現在のproton decayの実験的boundとぎりぎりconsistentで、近い将来実験に掛かる程であること、を明らかにした。
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