研究概要 |
量子色力学(QCD)の理論的予言精度は、標準模型の検証およびそれを越える模型の手がかりを得るという観点から現在重要な問題となっている。中でも、理論的不定性を減らすべく、QCD高次効果の詳細な検討、B中間子等、重いクォークを含む系に対する摂動・非摂動的取り扱いの研究は近年目覚しい成果を挙げている。(総合報告、参考論文 2) 本研究では重いクォークを含んだハドロンに対する非相対論的有効理論を用いた解析、ならぴに新しい加速器実験で想定される物理現象の解明を目指した。まず、B中間子の光円錐波動関数に対し非相対論的有効理論を適用し、軽いクォークの横運動量分布を考察した昨年度の成果(参考論文 1)を発展させ、B中間子の包含崩壊に現れる構造関数を考察した。構造関数についても高次フォック状態を無視する近似で解析的に解が得られることを示した。様々なB崩壊を理解する上で重要な進歩である。成果は現在論文に取りまとめ中である。 RHIC等の新しい実験に対する考察としては、昨年に引き続き(1)偏極過程でのJ/Ψ粒子生成、また(2)横偏極過程でのDrell-Yan過程を取り上げた。偏極陽子内のグルオン分布の情報を得るために、J/Ψ粒子生成を観測することが有効であることを指摘した(参考論文 5)。RHICの偏極実験では陽子の構造に関しかつてない情報が得られるものと期待されている。昨年の縦偏極での成果(参考論文 3,6)を発展させ、横偏極陽子・陽子消滅におけるレプトン対の横運動量分布に対するソフトグルオン効果を取り入れた解析を行った。成果は現在論文に取りまとめ中である。この成果は今後の実験結果解析の上で重要な役割を果たすものと考えられる。
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