研究概要 |
ニュートリノの中性子物質中の不透明度(opacity)は超新星爆発に伴う中性子星の生成-進化過程の解明にとって最も重要な物理量の一つである.ニュートリノの不透明度は具体的には(1)数値的に中性子星生成過程の計算を行う際に使われ,中性子星生成に伴う中性子物質のK中間子凝縮相への相転移および(2)その後の中性子星の熱的進化を数値的に計算する際に使われる.この研究においてはニュートリノが縮退していない場合と縮退している場合の両方について,有限温度の理論計算を行ないニュートリノの不透明度を求めた.K中間子凝縮相の存在下,多体相関のある背景によるニュートリノが散乱され中間子によって誘起されるニュートリノ吸収過程(kaon-induced absorption process)を計算し,それと競合するニュートリノ-核子散乱過程,直接ニュートリノ吸収過程(direct neutrino absorption process)と比較した.これら三つの過程の比較はニュートリノが非縮退,縮退の場合両方について行った. この計算で求められたニュートリノの不透明度は超新星爆発に伴う中性子星生成において中性子物質のK中間子凝縮相への相転移の可能性の検討,そして究極的に中性子星として安定に存在できるか否かの判定に役立つ.不安定な場合には中性子星ではなくブラックホールができることとなる.さらにX線衛星を使った中性子星の表面温度の観測結果と中性子星の熱的進化の数値計算結果とを比較することにより星の内部に存在する可能性のあるK中間子凝縮相の有無を探知できる可能性がある.この研究は星の進化の最終段階を対象として高密度物質中の輸送現象の研究の一環として行われている. 本研究は千葉工業大学,京都大学との共同研究でなされた.
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