研究概要 |
本研究は星の進化の最終段階を対象とした高密度物質中の輸送現象の研究の一環として以下の関連する項目で行った。 (1)ニュートリノの中性子物質中の不透明度(opacity)の計算。 昨年度の研究実績報告書に記述した,超新星爆発に伴う中性子星の生成-進化過程の解明にとって最も重要な物理量の一つであるニュートリノの不透明度の計算結果が出版された。 (2)進化の最終段階にある星の内部に存在する高密度物質の物性の研究。 星の表面での重力加速度は星の質量の1/3乗に比例し,星の質量密度の2/3乗に比例する。したがって高密度物質を内部に含む星,特に中性子星は太陽程度の質量でも,星の近傍で強い重力場を作り出す。このため,他の種類の星(例えば太陽などの主系列星)では見られない効果が現れる。その一つとして力学的性質を調べ,観測との比較で検証できる効果を探索した。 (3)宇宙環境利用による材料創成の研究。 宇宙には宇宙初期から始まって,ある種の星で進化の最終段階に起こる重力崩壊,超新星爆発,高度に進化した星の内部,ブラックホール,宇宙空間等様々な条件下で物質が存在する。このような宇宙条件下での重力場,電磁場,温度,圧力,質量密度,エネルギー,フェルミ温度,超伝導,超流動転位温度等の様々な物質量を概観し,それらを地上の実験条件下での物質量と比較し,新材料創成の条件を理論的に考察した。現在のところ人工衛星,スペースシャトル,宇宙ステーション等で超高真空,微小重力などの条件が利用されて地上ではできない様々な科学実験,材料創成が行われている。さらに,観測等の間接的手段をも含めた広い意味での宇宙環境を利用すれば物質の状態に関してはるかに多くの情報が得られ,新材料創成に役立てることができるものと考えられる。また地上の実験室で宇宙環境の条件を作り出す試みについても概観した。
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