研究概要 |
星の進化の最終段階において星の内部にある物質は高温高密度状態にあり,地上の実験室では実現されえない様々な現象が顕著に現れる.本研究においては,主に中性子星物質を対象として以下の素過程を調べた.まず,相互作用が弱く地上の実験室では生成が困難な--従って,宇宙に存在すると重力は及ぼすが光らない暗黒物質を構成するような--粒子も高温高密度状態では大量に生成される.そこで,暗黒物質の有力候補の一つアキシオンと呼ばれる擬スカラー粒子の中性子星からの熱的制動輻射率を計算した.この理論結果を使ってX線衛星による中性子星表面温度の観測結果と比較することによりアキシオンの性質に関して強い制限がつけられる.また,ニュートリノは弱い相互作用しかしない粒子であるが,高温高密度の条件下では物質により散乱されて容易に星の内部から抜け出られない場合がある.その程度を表す量--中性子物質中の不透明度(opacity)--は超新星爆発に伴う中性子星の生成-進化過程の解明にとって最も重要な物理量の一つであり,これを計算した.得られた結果は超新星爆発に伴う中性子星生成において中性子物質のK中間子凝縮相への相転移の可能性の検討,そして究極的に中性子星として安定に存在できるか否かの判定に役立つ.不安定な場合には中性子星ではなくブラックホールができる.さらに中性子星の表面温度の観測結果との比較により星の内部に存在しうるK中間子凝縮相の有無を探知できる可能性がある.現在のところ人工衛星,スペースシャトル,宇宙ステーション等で超高真空,微小重力などの条件が利用されて地上ではできない様々な科学実験,材料創成が行われている.一方,宇宙には宇宙初期から始まって,超新星爆発,宇宙空間等様々な条件下で物質が存在する.このような宇宙条件下での様々な物理量を概観し,それらを地上の実験条件下での物理量と比較し,新材料創成の条件を理論的に考察した.
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