本研究課題の主体であるスピノル型ボーズ凝縮系の物理を記述するには、まずスピン自由度をうまく取り入れることのできる秩序変数を梼成する必要があるが、これをブロッホ状態(スピンコヒーレント状態)で記述できるところが要になる。つぎにこの秩序変数の力学を記述するものとして、時間依存非線形シュレーディンガー場に対するラグランジアンによって与えられるところがもうひとつのポイントになる。このラグランジアンは、ブロッホ状態の内部自由度を反映してスピン流体に対するラグランジアンに帰着する。 このスピン流体の理論形式からスピン構造に内在する位相欠陥であるスピン渦の基本的様相を解明するためには、構成原子の2体の相互作用の形を決定する必要があるが、それにたいして現象論的なスピン-スピン相互作用を採用する。その結果として、(i):一個のスピン渦を考えたとき、それは、hedgehog ansatzを仮定すると、スピンのprofile関数に対して動径座標に関する非線形2階常微分方程式を満たすことがわかり、その解として、"芯なし(coreless)"渦として帰結することがわかった、 研究課題のもうひとつの要素である位相欠陥に対する光学的効果に関して、以下のことが準備的な結果として得られた:すなわち、スピン構造は異方性媒質中の偏光変化によって観測されることが予想されるが、これは本質的には非線型媒質における偏光伝播の問題になる。これに対する基本的定式化に成功した。
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