1 スピノル型ボーズ凝縮体の力学をブロッホ状態(スピン・コヒーレント状態)を用いたラグランジアンにより定式化した。ここで、秩序変数がブロッホ状態で書かれることが要である。これにより、スピノル型凝縮体は"強磁性流体"であることがわかる。さらに超流動ヘリウム3Aのとの自然な対応がでてくる。スピン構造はヘリウム3Aの場合の織目構造に対応する。 2 以上の定式化を用いて、まず1個の渦に対するプロファイル関数をスピン-スピン相互作用から求めた。これから渦中心の運動方程式を導いた。渦に作用するマグナス力がスピンに起因する位相不変量である"巻きつき数"に比例することが著しい結果であり、マグナス力を測定することにより逆に渦のトポロジカルな情報が実験的に得られることになる。この力は、ハイゼンベルク強磁性模型におけるスピシ渦におけるものとも類似していることも注目すべきである。ただし、強磁性渦の場合と決定的に異なるのは、スピノルボーズ凝縮体の場合には、流れの運動エネルギーがあるのに対して、強磁性渦の場合にスピン自由度は空間の各点に固定されているために流れは存在しないことである。 3 スピノル型凝縮体は、ヘリウム3Aと類似の異方性流体であることに注目して、その光学的特性が偏光を用いた効果を検討した。その結果、(i)まず、強磁性状態の場合に、ファラデー効果が帰結することを示した。(ii)渦集合の存在による偏光の効果が定式化された。その基礎になるものは、流体の光学-力学効果である。すなわち、誘電テンソルは速度場の回転で表されること、さらにそれは渦度そのものにほかならないことに注意すると、渦集合を平均化すると一様な磁場中のファラデー効果と等価になることがわかる。これから、渦に関する情報が偏光を介して観測される可能性がでてきる。 4.偏光変化の特性を記述するためにストークス変数を用いることがきわめて有効である。その一般理論として、ストークス変数の力学理論を定式化した。
|