研究課題
基盤研究(C)
ヘリウム核において100〜200MeVの結合エネルギーで深く束縛されたケイオンの存在を理論的に予言した。このケイオン原子核は、極端に収縮しており、超低温高密度の状態となっている。さらに我々は、ケイオン核を生成する方法をいくつか提案した。静止ケイオン吸収法、ラムダ(1405)ドアーウエイ法、(pi,K)反応法などである。最近、静止ケイオン吸収法による岩崎たちの実験でストレンジ・トライバリオンが発見された。これは、ケイオン原子核と解釈できる画期的な発見である。それの理論解析を通して、我々は以下の重要な効果を明らかにした。極めて大きな相対論的効果、系の収縮によって強められたLS力効果、約15%のカイラル対称性の回復効果である。ケイオンの深い束縛状態の存在は、他分野へ次のようなインパクトを与える。「ストレンジネス核物理」にとっては、バリオンのみならずメソンを構成子とする原子核物理への第一歩となる。「ハドロン物理」にとっては、深く束縛されたハドロンの質量など、QCD自由度の発現を実証する可能性がでてくる。「天体核物理」にとっては、ケイオン凝縮相の発現を定量的に研究することが可能となる。日本では現在、J-PARCプロジェクトが進んでいる。そこでの50GeV大強度陽子シンクロトロンは、核物理研究にとって新しい展開を可能とする。その一環として、本研究は"ケイオン核物理"という独創的な研究の流れを創り出す足場を築いたといえる。
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