研究概要 |
近年の研究によって,超弦理論の非摂動効果においてブレーンと呼ばれる広がった対象が重要な役割を果たしていることがわかってきた。特にM理論と呼ばれる超弦理論の背後にあると考えられている理論の定式化においては2次元に広がった対象であるいわゆる膜の理論が基本的であると予想されている。ところが、弦の理論に比べて膜の理論はよくわかっているとは言えない。今年度の研究ではこの膜の理論を研究した。膜が時空の中を走ると世界体積と呼ばれる3次元の軌跡を作る。膜の理論はこの世界体積上の場の理論で記述される。この世界体積上の場の理論は弦の場合と違い繰り込み不可能であり解析が難しい。我々はこの理論を摂動論的に扱い,無限個のカウンター・タームを許すという立場で世界体積上の座標の取替えに対する不変性にアノマリーが出るかを議論した。もし,このようなアノマリーがあると,その前の係数をゼロにするという条件からいわゆる臨界次元が求まることが期待される。ところが,世界体積上の理論を摂動論的に扱うためには膜のある配位の周りの摂動という形で理論を考える必要がある。我々はこのような配位が縮退していないinduced metricを与えるときにはアノマリーが出ないこ.とを示した。 膜の理論にdimensional reductionという操作を施すと,弦の理論になる。やり方によっては弦の理論としてシルト型の作用を持つものを出すことができる。シルト型の作用を持つ弦理論は膜の理論と同様にある配位の周りの展開という形でしか摂動論を定義できない。我々はシルト型の作用を持つ弦理論においては臨界次元を出す方法があることを示し、その値は26であることを導出した。
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