研究概要 |
Si(111)-7×7表面にAgを単原子層吸着させてできるSi(111)-√<3>×√<3>-Ag表面の表面電子バンドの電子系は、理想的な2次元伝導電子系(2DES)を形成する。この2DESは、ステップや逆位相境界で囲まれた√<3>×√<3>-Agドメイン内に閉じ込められる。このような電子系の励起は、低次元性、量子サイズ効果、及び縁励起と面積励起の存在という興味深い特徴を含んでいる。 最初に、無限領域の金属単原層に生ずる2次元プラズモン(PL)を解析した。その結果、この2DESが高い有効密度を持っているにもかかわらず、低次元性のためにPLモードの波数qが大きくなるにつれて交換・相関の効果が顕著に現れることが分かった。また、高分解能電子エネルギー損失分光(HREELS)の実験結果を、ほぼ定量的に説明することができた。 次に局所密度汎関数法を用いて、幅一定D、長さ無限の帯状領域にある2DESに生ずる低次元PLを解析した。その結果、エネルギーの増大とともに、節の数が1つずつ増えていく一連のPL分散分枝を見出した。ここでいう節の数は、帯状領域を横切る方向での誘起電子密度(δn)分布により定まる。節数0,1のモードは、δn分布の偶奇性の異なる縁PLである。幅Dが小さくなると、節数0のモードは1次元PLに移行する。節数2以上のモードでは、qが小さいときδnの分布が定在波型をとり、qが大きくなるにつれて面積PLに移行する。節数が多いモードでは、より大きい波数領域まで、定在波型が存続する。幅Dが大きくなると、一連のPL分散分枝のエネルギー間隔が小さくなり、小さいqで面積PLに移行する。HREELSの実験と関連した解析を行ったところ、エネルギー損失スペクトルには一連のPL分散分枝による損失ピークが明瞭に現れ、プローブ電子の軌道が帯状領域の近傍にあれば、測定可能な損失強度があることが分かった。
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