研究課題/領域番号 |
13640316
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中尾 憲司 筑波大学, 物質工学系, 教授 (30011597)
|
研究分担者 |
鈴木 修吾 筑波大学, 物質工学系, 助教授 (90241794)
|
キーワード | アルカリ金属ドープC_<60> / 低エネルギー励起 / 超伝導 / 有限温度 / 動的ヤーン-テラー効果 / スール-近藤機構 / エネルギーギャップ / 超伝導転移温度 |
研究概要 |
本年度は、アルカリ金属ドープC60における超伝導の有限温度における特徴を調べた。我々はこれまで、アルカリ金属ドープC60における超伝導は動的ヤーン-テラー効果により引き起こされていることが指摘してきた。これは、実空間における描像としての記述であるが、波数空間においては、スール-近藤機構として同じ側面を記述することができる。これらはともに多バンド超伝導体に特有のメカニズムであり、バンド間のクーパー対の遷移が超伝導秩序の安定化に大きく寄与するという単一バンド超伝導体にはみられない特徴を有する。そこで、このような特徴的な超伝導機構をもつアルカリ金属ドープC60の有限温度の性質を調べるため、ボゴリューボフ変換にもとづく理論的解析を行った。その結果、エネルギーギャップΔと超伝導転移温度T_Cの間に成り立つ関係式2Δ=3.53k_BT_Cが、単一バンド超伝導体と同様に、この系でも成立することがわかった。これは、この系の超伝導発現機構が動的ヤーン-テラー効果という特徴的なものであるにもかかわらず、実験的に観測される現象が通常の超伝導体と同じであるという点と一致している。来年度は、これらの結果をもとにアルカリ金属ドープC60における超伝導の有限温度における特徴を、さらに、マイクロ波吸収や核磁気共鳴吸収のスペクトルの理論的解析に拡張して調べる予定である。
|