研究概要 |
3年目になる今年度は、Keldysh Green関数を用いてX線吸収微細構造(XAFS)とX線光電子スペクトル(XPS)の第一原理からのアプローチをさらに押し進めた。 XPSの第一原理の理論としてはCaroliらの理論があったが、実際の応用には不向きであった。Caroliらの理論に現れる非平衡Green関数G<をやはりスケルトン展開し、多原子共鳴光電子放出(MARPE),ロス(intrinsic+extrinsic),Debye-Waller, Franck-Condon因子の役割について理論的に詳細に検討した。特にMARPEの現れる条件を詳細に検討し、X線吸収原子の周りの格子欠陥、正8面体からのずれなどがなければMARPEは現れないことを初めて指摘し,さらに新しい発展としては、共鳴現象を説明するためには輻射場遮へいが本質的な役割を果たすことを見いだした。実際その効果を取り入れないとMARPEは現れないし、通常の原子内共鳴光電子放出、XAFSの共鳴効果でも輻射場遮へい効果が最も重要な効果である。この成果は論文としてChemical Physics Letters 368(2003)147-152に掲載された。さらにこれらの共鳴効果を扱う際には遮蔽クーロン相互作用の裸のクーロン相互作用しか今まで考慮に入れられていなかった。しかし共鳴エネルギー近傍ではその分極項も大きな役割を果たすという重要な発見をし、MARPEへ応用して実験との定量的一致を得ることができた。この成果は大学院生の荒井礼子君がSwedenで開催されるXAFSの国際会議で発表し高い評価を得た(PhysicaScripta, 2004)。また相対論効果、入射X線の強度が大きい場合でも適用できるXAFS,XPS理論を構築するために、量子電気力学効果を取り入れたKeldysh Green関数理論を開発し、1つはXAFS国際会議で招待講演で発表し、論文としても公表した(J.Elect.Spect, 2004)
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