研究概要 |
研究期間に得られた研究成果は次のようである。 1.ショックレー表面状態の電気伝導 sp混成により生ずる表面状態の電気伝導度の特性を研究し、s, pバンドのバンド幅およびsp混成の強さと電気伝導度との関係を明らかにした。この結果は、貴金属表面のショックレー状態への応用できることがわかった。 2.ダングリング・ボンド状態の電気伝導 半導体のバンドギャップ中に存在する表面状態の電気伝導度とバルク結晶のバンドギャップとの相関を明らかにした。 3.IV族半導体(111)2×1構造の電気伝導 表面構造、特に、バックリングの有無が電気伝導に及ぼす効果を研究した。また、二探針STMの電気伝導度と表面構造との関係を研究し、表面バンドの有効質量と二探針STMの電気伝導との関係を明らかにした。 4.シリコン・ナノワイヤーの表面電気伝導 中間サイズ・ナノワイヤー内の非一様な電気伝導の研究を行った。ナノワイヤーのエッジに存在するエッジ状態による電気伝導の可能性を新たに見出した。 5.Si(111)√<3>×√<3>-Ag表面の単原子ステップの電気抵抗とブロッホ波の抵抗 Si(111)√<3>×√<3>-Ag表面のステップの電気抵抗の計算を行い、最近の実験結果を理論的に説明した。また、ステップ下段に局在するステップ状態を新たに見出した。さらに、エバネッセント波も含む波の一般的な振幅と位相の新たな定義を考案し、ブロッホ波の透過に対する新たな表式を導出した。その結果、ブロッホ波の透過では、ブロッホ波数の不一致による抵抗とブロッホ波関数の周期的部分の不連続性による抵抗の二つの部分に分けて考えることができることを見出した。
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