研究概要 |
グラファイトをフッ素化して得られる層状構造を持つフッ化炭素は、CFの組成比では透明な絶縁体であることが実験的に知られている。また、C_2Fの組成比でもフッ素により表面終端されたsp^3結合した層状の炭素が積層した構造であると実験的に推定されている。我々は、物質の基本構造決定を高い精度で行なえる第一原理的分子動力学法を用いて、層状フッ化炭素の構造と電子状態を決定した。その結果、ダイヤモンド薄膜がフッ素終端された構造と見なせるこのフッ化炭素C_nFにおいて、炭素層の膜厚を厚くしていくと、n=1, 2, 3では膜の電子状態が直接遷移型ギャップを持っのに対して、nが4を超えるとダイヤモンドに類似した間接遷移型ギャップが現れることを見出した。本年度の実績は以下のようにまとめられる。 1.層状フッ化炭素C_nFの構造決定と電子状態の変化をn=1,...,6に関して行い、直接遷移型半導体であるn=1, 2の場合のバンドギャップの決定、光学遷移の特性を理論決定した。 2.層状フッ化BNの構造決定と電子状態の変化を調べ、この系がフッ化炭素とは異なる膜厚依存性を持っ直接遷移型半導体になりうることを、理論的に予言した。 3.フッ化炭素の母物質であるナノグラファイトの電子状態を調べ、以前から予測されていた磁気秩序形成が幾つかの構造に対しては厳密に示せることを明らかにした。
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