ステップでの原子配列のダイナミックスを明らかにするため、2つの面から研究を行った。 1)ステップでの原子配列が個々の原子の動きによって変化することをシミュレーションを利用して理論的に調べ、原子の動きは単純なのもではなく、平坦なテラスにいる原子がその変化に加わる複雑なものであることを明らかにした。 シリコンの(100)面を研究の対象とし、表面上にできた数百個の原子でできている1層高さのナノ構造が熱緩和していくとき、ステップのダイナミックスに注目しながら原子の動きを解析した。その結果、原子の表面での動きである原子拡散は、従来考えられてきた1原子の拡散ではなく、ステップの原子あるいはテラスにあった原子と交換し、元の原子は別の原子が抜けてできた空孔に落ちて拡散しなくなり、その別の原子が拡散するという過程を繰り返すことを明らかにした。これはアインシュタインの提唱した拡散が上の場合には成り立っていないことを示す。 2)反射電子回折(RHEED)波動関数を求め、ステップでの原子配列によって反射強度が著しく変化するといわれている表面波共鳴条件における波動関数の振舞いを明らかにした。表面波共鳴条件では、'ブラッグ条件に比べ、電子の密度は表面で数倍から10倍程度強く局在する。これによってステップの構造変化によって反射強度および強度分布が変化することが明らかになった。 これらの研究から、ステップでの原子配列は複雑なダイナミックスによって起っていることが示され、これをRHEEDを使って解析できることが予想される。今後この成果を元にさらに研究を続けることが有効である。
|