微視的、非経験的に求めた表面-探針系の電子状態による解析理論と数値シミュレーションを基本として、個々の原子のスケールでのトンネル現象を解明することが、この研究の目的である。 研究項目「フラーレン系の電子状態」:6員環から成る亀甲格子のグラファイトの1、2・・・5個が5員環になるとナノホーン、6個のときはカーボンナノチューブCNTになる。CNTの電子状態についてこれまでなされた国内外の研究は、zig-zag型、arm-chair型やカイラリティのある場合など多様であるが、これらは全て両端は「開いて」いる。われわれは、CNTをSTM探針として実用に役立てる立場から、5員環6個によって「閉じた」CNTの尖端近傍の電子状態を求める。zig-zag型の多層CNTで5員環を放射状に配置すると、そのHOMO付近の価電子状態は5員環付近のリング状の領域で電荷密度が高いので、最近、三重大学および早稲田大学で得られた電界放射顕微鏡FEM像を、よく再現する。この結果については、論文として纏めつつある。さらに吟味のため、新たな研究項目を設定して、次に述べる計算を行っている。 研究項目「電界放射の基礎理論」:FEM像との比較が必要になったので、電界放射の基確理論について探索した。すなわち、上に述べた第一原理計算によって得た完全系からGreen関数を求め、Lippmann-Schwinger積分方程式を数値的に解いて、放射電子の波動関数を得る。スクリーン上での確率、|ψ(r)|^2をFEM像と比較する。
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