研究概要 |
ノンコリニア密度汎関数法を用いて、遷移金属クラスターの電子状態を計算することにより、そのノンコリニア磁性について以下のことを明らかにした。 (1)VからNiまでの一連の遷移金属元素について、安定構造である双ピラミッド型5両体クラスターの電子状態を計算し、Feクラスター、Mnクラスターについては、第1近接原子間の強磁性相互作用と、第2近接原子間の反強磁性相互作用の競合によるノンコリニア磁性が現われることを明らかにした。Crクラスターについては、反強磁性相互作用のフラストレーションに起因するノンコリニア磁性が現われることを明らかにした。また、V,Co,Niクラスターではコリニア磁性のみが現われることも明らかにした。 (2)Cr,Mnの双ピラミッド7量体クラスターでは、正7角形の底辺原子サイトの磁気モーメントが144度および72度ずつ回転するらせん磁性をもつことを明らかにした。これらも(1)に記した近接原子間の相互作用で説明できる。 (3)ワイヤー状5量体および7量体Feクラスターでは、原子間距離を変化させたとき、磁性が、平行配向からノンコリニア配向へ(またはその逆へ)突然変化しうることを明らかにした。このことから、ノンコリニア磁性の発現には、単に3d電子間の相互作用だけでなく、4s電子等の非局在電子との相互作用(いわゆるRKKY相互作用)の寄与が関わっていることを明らかにした。
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