結晶表面のメゾスコピック構造形成の基礎に関する理論的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640329
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 上羽 牧夫 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30183213)
• キーワード: ステップ / シリコン / ステップの蛇行 / ステップ・バンチング / 結晶成長 / 平衡形 / 弾性相互作用 / エピタキシャル成長

研究概要

微斜面上のステップのパターン形成の問題,とくに拡散の異方性交替や2相共存表面でのステップのバンチングと蛇行の問題およびヘテロエピタキシャル系での弾性相互作用による島形成の機構を研究し,以下のような知見を得た.
1.シリコン(001)微斜面のように拡散の異方性がテラスごとに交替する系では,外場による吸着原子のドリフトによって外場の向きによらずにステップ対の形成が起きるが,ステップ間斥力の効果によって今まで知られていなかったタイプのステップの位相をそろえた蛇行が起きることを理論的ならびにモンテカルロシミュレーションによって確認した.
2.シリコンの(111)微斜面で7×7構造から1×1構造への転移点の近傍ではステップを境に2相が共存する.このとき2相の拡散係数の違いによって,蒸発が弱い場合には位相をそろえたステップの蛇行が起きることを示した.これは最近の実験で見られた蛇行パターンを説明する.
3.高温のシリコンの(111)微斜面のような標準的な表面では外場による吸着原子のドリフトが位相のそろった蛇行パターンを生み出すこと,そのパターンがMBE成長について導かれた非線形発展方程式と同一の方程式によって記述できることを示した.
4.ヘテロエピタキシャル系の吸着物質の最低エネルギーの表面形態が弾性相互作用によってウルフの平衡形からどのように変わるかを2次元格子モデルのシミュレーションによって調べた.これによって連続弾性論のさまざまな疑わしい近似なしに基底状態を決めることができ,自発応力,格子不整合などによる成長様式の変化を推測することができた.

研究成果

• [文献書誌] M.Sato, M.Uwaha, Y.Saito: "Step Bunching Induced by Drift of Adatoms with Anisotropic Surface Diffusion"J. Cryst. Growth. 237-239. 43-46 (2002)
• [文献書誌] H.Uemura, M.Uwaha, Y.Saito: "Equilibrium Shape of a Heteroepitaxial Island"J. Phys. Soc. Jpn.. 71no.5. 1296-1307 (2002)
• [文献書誌] M.Sato, M.Uwaha, Y.Saito, Y.Hirose: "Step Wandering Induced by the Drift of Adatoms in a Conserved System"Phys. Rev. B. 65no.24. 245427-1-245427-6 (2002)
• [文献書誌] R.Kato, M.Uwaha, Y.Saito, H.Hibino: "Step Wandering Due to the Gap in Diffusion Coefficient on the Upper and the Lower Terraces"Surf. Sci.. 522. 64-74 (2003)
• [文献書誌] M.Sato, M.Uwaha, Y.Saito, Y.Hirose: "Repulsion-Mediated Step Wandering on a Si(001) Vicinal Face"Phys. Rev. B. 67. (2003)
• [文献書誌] 上羽牧夫: "微結晶形の緩和のダイナミクス・・・平衡形の実現と島の崩壊"表面科学(日本表面科学会誌). 23巻2号. 88-94 (2002)
• [文献書誌] 上羽牧夫, 佐藤正英: "吸着原子のドリフト流によるステップのバンチングと蛇行の理論について"真空(日本真空協会機関誌). 45巻7号. 557-563 (2002)
• [文献書誌] 齋藤幸夫, 上村英明, 上羽牧夫: "歪を考慮した二次元弾性格子模型"日本結晶成長学会誌. 29巻1号. 8-11 (2002)
• [文献書誌] 佐藤正英, 上羽牧夫, 齋藤幸夫: "表面拡散の異方性と吸着原子のドリフトによるステップバンチング"日本結晶成長学会誌. 29巻1号. 28-33 (2002)