研究概要 |
微斜面上のステップのパターン形成の問題,とくに拡散の異方性交替や2相共存表面でのステップのバンチングと蛇行の問題,およびヘテロエピタキシャル系での弾性相互作用による島形成の機構を研究し,以下のような知見を得た。 1.シリコンの(111)微斜面で7x7構造から1x1構造への転移点の近傍ではステップを境に2相が共存する.このとき成長中に位相をそろえたステップの蛇行が起きることを実験的に見出した.この現象を2相の拡散係数と平衡原子密度の違いによって理論的に説明し,モンテカルロ・シミュレーションによって蛇行パターンの特徴を調べた。 2.シリコンの(001)微斜面のようにテラスとステップの構造が1段ごとに交替する系では,外場による吸着原子のドリフトによって外場の向きによらずにステップ対の形成が起きることが知られている.1次元ステップモデルをつかって,拡散の異方性の交替,ステップのカイネティク係数の交替がどのような条件でバンチングを起こすかを調べた. 3.高温のシリコンの(111)微斜面のような標準的な表面では外場による吸着原子のドリフトが位相のそろった周期的な蛇行パターンを生み出すこと,そのパターンがMBE成長について導かれた非線形発展方程式と同一の方程式によって記述できることを示した. 4.ヘテロエピタキシャル系の吸着物質の最低エネルギーの表面形態が格子不整合と結晶表面の自発応力によってどのように変わるかを2次元格子モデルの数値計算によって調べた.その結果をもとに薄膜の成長様式を理論的に予想し,今まで知られていない成長様式がありうることを見出した.
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