研究概要 |
研究実績の概要は以下のとおり. グリーン関数法およびコヒーレント・ポテンシャル近似を用いた第一原理計算によって新しい希薄磁性半導体の可能性を見出した。また、超構造に対する輸送現象を計算するための計算機コードを開発し、現実的な系に対するトンネル磁気抵抗を調べて、実験との詳細な比較を行なった。 1.II-IV-V2およびI-III-VI2カルコパイライト型化合物磁性半導体について電子状態を計算し、強磁性転移温度の評価を行なった。その結果、(Cd,Mn)GeP2や(Zn,Mn)GeP2については格子欠陥等のない状態では強磁性が実現されず、スピングラス状態が基底状態であることを見出した。また、種々の欠陥を導入した計算を行なうことによって、実験的に確認されている強磁性は欠陥やGe位置に入ったMn等が原因である可能性が高いことを提案した。またI-III-VI2カルコパイライトである(Cu,TM)AlS2について、TMとしてVやCrを用いることによって高い強磁性転移温度が得られることを見出した。 2.Ni/Cu/絶縁層/Ni型の超構造について、その輸送現象の理論を展開した。このようなサンプルに理想的なリードを介して流れるトンネル電流がCu層の厚さとともにどのように変化するか、また、トンネル磁気抵抗がどのように振舞うかを調べた。その結果、絶縁層による障壁が十分大きいときにはCu層の層厚とともにトンネル磁気抵抗比が振動的に変化することを確認した。これは実験的に見出されているCo間のトンネル磁気抵抗の実験を定性的に説明するものである。ただし、Cu層における散乱過程が取り入れておらず、振動の減衰が見られない。定量的な比較のためにはコヒーレント・ポテンシャル近似等を取り入れた計算が必要であるが結論された。 3.大きな超構造の輸送現象についてより信頼性の高い計算を実行するための遮蔽KKRの手法を用いた計算機コードを開発した。現在テストを終え、実際に計算に使える段階である。
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