半導体2次元電子系や量子細線などの低次元電子系では、試料端での電子の閉じこめポテンシャルの空間分布の情報が電子のエネルギー状態やその電気伝導の理解には不可欠である。本研究では量子ホール効果のエッジ状態の空間分布の研究を応用し2次元電子系および1ミクロン以下の線幅の細線の試料端付近の局所電子濃度分布を調べた。GaAs/AlGaAs細線では、線幅が1ミクロン以下になると閉じ込めポテンシャルの形状が空間的に切り立って、急峻な閉じ込めになることが分かった。さらに光照射により空乏層が縮小し、閉じ込めポテンシャルの空間分布が変化する様子を詳細に調べた。また、サイドゲートにより電子の閉じ込めポテンシャルを電圧で制御できる試料を作製し、閉じ込めポテンシャルとエッジ状態の広がりと局所電子濃度の分布を調べた。 臨界電流が試料線幅に比例しないタイプの量子ホール効果のブレークダウン現象で、その原因について試料端における電流集中では説明できないことを示し、むしろ2次元電子系の均一度などバルク2次元電子系の性質が原因であることを示す実験結果を得た。これらの成果は、第26回半導体物理学国際会議(2002年・英国エジンバラ)と2次元電子系の性質国際会議(2003年・奈良)で発表するとともに国内学会・研究会等でも発表し議論を行った。 なお、平成15年1月1日付けで研究代表者音賢一は大阪大学大学院理学研究科より千葉大学理学部に異動し研究を継続した。
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